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高橋英樹 オフィシャルWebサイト

運命のAM 3:30

– まさかの強盗…!? Episode 2 –

いや、マジでそんなことがあったんです。大学を卒業したての頃なんて、僕はほとんど仕事も無く、バイトと練習に明け暮れる日々でございました。その時のお話です。

Episode 1はこちら

なぜ僕が…

なぜ僕が当時、日曜日の深夜にバイトに入っていたのかといいますとですね、日曜日の深夜は、お客さんの数が圧倒的に少ないのですよ。要するに、レジうちが少ない分、単純に仕事が楽なのであります。これまた、仕事熱心なはずの私からそんな言葉が飛び出るとは、心外に思われる方も多いかと存じますが、まあ日曜日が楽なのは事実なので致し方ござりませぬ。

するとですね、0:00ころまでは入れ替わり立ち代り、お客の誰かが雑誌のコーナーで立ち読みをしていた店内から、徐々にではありますが人の姿が消えていき、そのうちお客様の数がゼロの時間帯も増えてくる訳でございますよ。
「あぁこれでは売り上げが伸びないわ。深夜がもう少し賑わってくれると経営も楽なのに。。。」というオーナーの嘆きが聞こえてきそうなのですが、バイト君の立場から言わせて頂けば、そんな事はお構いなしなのです。店が儲かろうが、儲からなかろうが、自分の時給には関係がごじゃりませぬ。

雑誌の納品が終わり、いよいよ深夜勤務の最大の難関、チルドC(牛乳や惣菜関係で、鮮度が日付け管理の物)の納品中でした。時刻はAM3:15頃。 これは種類も数も多くて、プリン等のカップ類デザートや1リットルの牛乳まで、細々とした物から、まとまると結構な重さになる物まで、大量に納品されるのです。非常に手間と時間がかかる一大イベントでして、これが終わると、やっと休憩に入れるといった作業なのでした。

いつものように一心不乱に相方と手分けして、検品と値付け、品だしの真っ只中、誰一人としてレジに呼ぶ邪魔者、お客様もおらず、作業は順調にはかどっておりました。

そう、彼が来るまではね…

時は熟した

AM3:30頃。今から思い出すと、約20分位、店内には誰もお客様が居ないという状態が続いておりました。ひたすら作業を繰り返す我らバイト二人に「ホラァ!金出せ!!!」と恫喝する声に、僕は「何だ!?」と思って顔を上げました。

レジの目の前で、いわゆる「拳銃のようなもの」を手にして、銃口をこちらに向けて更に一言、「早くしろ!!!」って、これはどう客観的に、また全力で前向きに考えても、「いらっしゃいませ。朝早くからご苦労様です♪」といった類の代物ではございません。

犯人のいでたちはといいますと、「黒の皮帽子、黒サングラス、白マスク、黒の革ジャン、黒ズボン、黒手袋、黒靴」と全身黒ずくめ。

洞察力の鋭い僕でも、さすがに彼がトランクス派かブリーフ派かまでは判りかねましたが、よくもまあそんなにベタな装いできましたね。。。といった、いかにも「ご・う・と・う・です♪(三瓶の真似)」といういでたちでした。ちなみに単独犯でした。(逃走用に仲間が外に居たかどうかは今も不明)。

バイトの相方の方が犯人に近い位置にいた為、哀れ彼は腕をつかまれ、「早くしろ」とレジの方へ追いやられ、僕も後からレジへ入りました。「これに入れろ」と犯人がカウンターに投げて寄越したのは、深緑色のファスナー付きのナイロン製ポーチで、何故か所々にマジックの染みのようなものが付いておりました。結構、物を大切に使うタイプなのでしょうね。

金を詰め始めてすぐに、犯人は僕に対し、もう片方のレジも開ける様に要求してきました。

通常、深夜勤務中のレジはAM1:30に行う点検(レジの中の現金を計算して、不足などが起きていないか確認する作業)の後に、道路側のレジの方(学術的専門用語で2レジ♪)は、防犯上の理由から、現金を全て取り出して金庫の中に仕舞うのですが、当時の深夜勤務者の間では、「どうせまた、AM5:00には元に戻すんだからいいよ」的な発想が横行しておりまして、この日も「ただ今こちらのレジは休止中」という表示にしただけで、2レジの中の現金は金庫に仕舞わずにおりました。

これがいけなかった。結局二つのレジの中身をそっくりそのままくれてやったのですから。

また、犯人はひたすら「レジの下の金も入れろ」としきりに言っておりました。
何の事だか解らないので、「レジの下の金なんか無い」って言った途端、犯人はガバッと身を乗り出し、自らレジ内の現金収納箱を持ち上げて、その下を確認しました。さすがに、あの時は何をされるのかびっくりしましたね。相方は両手を上にあげていましたし。

よくスーパーなどで昔は見かけた光景ですが、レジ内のつり銭収納箱は、それごと取り出せて、両替用の紙幣をその下に仕舞っておいて、高額紙幣からのおつりの時にはそこから両替をするという、昔はちょっとした金庫の役割を担っていたのですね。

恐らく犯人はそのことを言っていたのでしょう。しかしそんな場所に今どき、しかも深夜に金を仕舞っておくお店などあるはずもなく、犯人はあらかた詰め終わった現金袋を持って、サーッと逃亡していきました。この間、犯行は確か5分位だったかと思います。

結構長く居た様な気もするのですが、その間に、他のお客さんが入ってこなくて良かったとは思いますね。すぐに警察、店長、の順で電話をしましたが、その後まさかあんなに面倒で不快な目にあうとは、夢にも思いませんでした。

つづきを読む(警察が来た)